火災の発生をいち早く検知し、私たちに危険を知らせる火災報知器。
火災による死因の約半数が逃げ遅れによるものだと言われています。
そこで、初期消火への対応や安全な避難経路の確保の助けになる火災報知器についてご紹介させていただければと思います。
最後まで記事をお読みいただき、火災報知器の設置をご検討してみてはいかがでしょうか。
火災報知器とは、火災が発生したことを検知して警報で知らせる装置のことです。火災感知器や火災警報器とも呼ばれることがあります。
煙や熱などを検知するセンサーが内蔵されており、建物内の人々に危険を知らせます。
火災報知器を設置することで消火器を用いた初期消火への対応や、安全な避難経路の確保が可能となります。
消防法では、火災報知器を「自動火災報知設備(自火報)」「特定小規模施設用自動火災報知設備(特自火報)」「住宅用火災警報器」の3つに分類することができます。設置が義務付けられているのは自動火災報知設備を設置する大型施設と住宅用火災警報器を設置する一般住宅ですが、近年の宿泊施設や老人ホームでの火災事故による死者数の増加を受け、火災報知器の設置義務施設の拡大、設置可能範囲の拡張が年々進められています。
自火報は、感知器(煙や熱)・発信機・中継器・受信機・表示灯・地区音響装置の6つから構成されています。設置が義務付けられている防火対象物・特定防火対象物には、学校、病院、介護施設、マンション、劇場等の大型の施設が含まれます。
参照:能美防災株式会社 自動火災報知設備の設置基準(政令21条)
特自火報は連動型の警報機能付火災報知器のみで構成することが可能です。設置義務はありませんが、近年の火災事故の経緯から年々設置可能施設が拡大されています。設置可能施設として、延べ面積が300㎡以下の宿泊施設、診療所、デイサービス施設、カラオケボックス等が対象となります。
参照:総務省消防庁 特定小規模施設用自動火災報知設備の設置基準の検討について
一般住宅向けの火災警報器で、単体のみで作動する単独型と周囲の火災警報器と連動して作動する連動型があります。
単独型:火災を感知した警報器のみ、警報を発する
連動型:火災を感知した警報器とそれに連動する警報器全てが警報を発する
また、連動型には配線方式と無線方式があります。
配線方式:工事が必要になるが、離れた部屋の火災をいち早く発見できる
無線方式:工事不要で、設置資格がいらないため部屋への取付が簡単。
参照:日本消防検定協会 消防機器等早わかり講座
火災報知器が感知する対象として、熱・煙・炎があり、何を感知するかによって種類が異なります。
天井に取り付けられることが多く、火災によって生じる熱が天井面に蓄熱されることを利用し、温度の上昇を感知することで警報を発します。熱感知器には定温式スポット型と差動式スポット型があり、設置する場所によって使い分けます。
-定温式スポット型-
感知器周囲の温度が上昇し、ある一定温度に達すると火災として感知。推奨される設置場所は、水蒸気が多い場所、煙が滞留する場所、常時温度が高い場所など。
-差動式スポット型-
感知器周囲の一定時間における温度上昇率が、ある一定以上に達すると火災として感知。推奨される設置場所は、会議室、ロビー、油庫などの温度変化がない場所。
参照:一般社団法人 日本火災報知機工業会
天井に取り付けられることが多く、火災によって生じる煙が天井面に蓄煙されることを利用し、周囲の空気に含まれる一定濃度以上の煙を感知することで警報を発します。煙を感知するため、熱感知器よりも早く火災に気が付くことが可能になります。
近年では、煙によって生じる室内の香料の変化を感知し警報する光電式スポット型が主流になりました。
推奨される設置場所として、寝室、階段、リビングだけでなく倉庫やホール、エレベーターといった高さがあることで早期に熱を感知しにくい場所が挙げられます。
参照:日本消防検定協会 消防機器早わかり講座 感知器
炎から発せられる紫外線や赤外線を利用し、紫外線や赤外線が一定の量を超えると火災を感知し警報を発します。
屋外にも設置することができ、天井の高さが20m以上ある、映画館や倉庫、トンネルへの設置が推奨されています。
炎から放射される赤外線の変化量が一定以上になった時に火災を感知する赤外線式スポット型と、紫外線の変化量が一定以上になった時に火災を感知する紫外線式スポット型があります。
参照:能美防災株式会社 自動火災報知設備について 感知器とは
火災が起きていないにも関わらず、火災報知器が作動する原因として
・エアコンやストーブによる急激な温度上昇
・害虫駆除剤
・料理によって生じる煙や水蒸気
・たばこ
・結露
・ほこりや小さな虫
・経年劣化
・衝撃
などが考えられます。煙や水蒸気等は熱を感知するタイプでは反応することはありませんが、煙を感知するタイプでは誤作動が生じることがあります。原因を特定し、適切に対処することで火災から身を守ることができます。
参照:大建工業株式会社 火災報知器の誤作動
無線方式の火災報知器は電池で稼働しているため、電池が切れそうになると警告音やランプ、音声で電池の寿命が近いことをお知らせます。
電池の寿命は10年程度で、電池のみの交換も可能なのですが、火災報知器内部の電子部品の劣化も進んでいるため、本体ごと交換することが推奨されています。
本体の停止ボタンを押すかひもを引っ張ることで警報音は鳴り止みますが、しばらくすると再度警報音が発せられるので、早めの本体交換をおすすめします。
参照:Panasonic 火災報知器の電池切れ
自動火災報知設備の構成要素の一つである差動式スポット型感知器BV42208K。感知器ベースBVK4010と組み合わせて設置します。急激な温度上昇を感知し、受信機へ信号を送ります。
自動火災報知設備の構成要素の一つである定温式スポット型感知器DFG-1W70L。室温が70℃に達すると感知し、受信機へ信号を送ります。感熱板の周りにはガードが付いているため、誤作動の防止になります。